【ボルゲーゼ美術館展】ラファエロの魅惑

上野の東京都美術館で「ボルゲーゼ美術館展」が始まりました。イタリア・ルネサンスの作品が主体ですが、これらはどうしてもキリスト教歴史観がないと理解が難しいので、僕にとっては苦手な分野です。そして海外の美術館からの巡回は、目玉に乏しいということもあって、今回の展示もそれほど大きな期待は抱いていませんでした。

鑑賞してみると、展覧会のサブタイトルにも謳われているラファエロの「一角獣を抱く貴婦人」の秀逸さが目を引きます。描かれている女性の肌が「濃淡」というよりも、赤味と青味で表現されているのです。ほんのりと赤味を帯びた顔と、僅かに冷たさを漂わせた肩の対比がとても繊細で素晴らしい。宗教画の多くは、こういった細かい部分を平板に描いてしまっていますが、対象に向けられた表現者の気持ちが表れている作品はやはり違いますね。

興味深かったのは、後世のデ・キリコのようなシュールレアリズム、またピカソやブラックのキュビズムの原形ではないかと思わせるような描き方をしたヴィーナスが複数あったことです。聖カタリナを描いた作品も、肌を繊細に表現していて印象的でした。

ところで東京都美術館は改修のため、この展覧会の終了後に約2年間の休館となります。国立新美術館の開館で、箱貸しのメッカとしての地位がかなり損なわれているようですね。バリアフリーとも程遠く、かなり鑑賞しにくい構造なので、鑑賞者に配慮した作りにしてくれることを望みたいものです。

http://www.tobikan.jp/