【鈴木光司】「エッジ」に騙されるな

「リング」「らせん」の著者でもある鈴木光司による、お得意の科学を散りばめた新作小説「エッジ」を一気に読了しました。量子力学や数学がマジックのようにストーリーを彩り、最後まで興味を惹きつけられたままおもしろく読み進めることができます。

でも、なんとなく不満なんですよね。科学の持つ論理性で騙されそうになるけれど、ストーリー展開において大事なポイントでは、まったく必然性のない決め付けが多いのです。そうならなければならない必然が感じられないのに、話の中では皆がそれを信じてしまっている… それに最後で父親の正体が判明する場面でも、現実的にあり得ない設定になっています。必死になって探していた父親の顔がわからなくなるなんてことは、ちょっとあり得ないですね。

基本的には、この小説はファンタジーです。科学論文というわけではないので、理論的な整合性がなくてもそれは仕方ないところなのですが、いかにも著者が読者を「言いくるめている」感じがしてしまって消化不良なまま、この作品は終わってしまうのです。

http://www.kadokawa.co.jp/sp/200812-03/