【ロシア・アヴァンギャルド展】抽象絵画への流れ

渋谷のBUNKAMURA、ザ・ミュージアムで開催されている「青春のロシア・アヴァンギャルド」を鑑賞しました。これはモスクワ市立近代美術館所蔵の作品によるものですが、近代絵画から抽象への流れを実感できて非常に興味深かったです。もともとロシア絵画は、シチューキンのような富豪がいち早くパリの流行作を買い付けてくることによって華開いたとのこと。一握りの金持ちが文化や経済を圧倒的に牽引していくところは、ロシアにおいては昔も今も変わっていないですね。

有名どころではシャガールの作品くらいですが、一見するとマティスピカソ、ブラックを思わせるような作品が散見され、それらは模倣のようでもありますが、それなりに独自性を保ったオリジナル作品であることは間違いないと思いました。その中でマレーヴィチの作品の変遷によって、ブラックのようなキュビズムが次第にモンドリアンカンディンスキーを思わせる色と形に収斂していく様子がはっきりと見て取れます。これがこの展覧会で最もおもしろいところでしょう。

ただカンディンスキー自身の作品は彼の特徴である抽象絵画ではなく、印象派の流れを汲む小品が1点展示されていただけだったのが、やや物足りなかったです。キュビズムが彼の画風にたどり着く過程が、マレーヴィチの作品を通して垣間見られただけに、残念に思いました。また、印象派以降の絵画について一通り知っていた方が、きっとこの展覧会を楽しめるのではないでしょうか。

http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/08_moscow/index.html