【オーケストラ】指揮者・宇宿允人

10数年前に招待券をもらってチャイコフスキーを聴いて、そのダイナミックでクリアな音に感動した指揮者・宇宿允人(うすきまさと)。彼はエキセントリックでカリスマ的な指揮者として知られ、常設のオケではなく自分のコンサートのたびにメンバーを集めては「フロイデフィル(旧称TOKYOフィルハーモニア)」として演奏するのです。今日は、初体験の時と同じ池袋の東京芸術劇場で、モーツァルトを聴いてきました。

昔よりオケの団員個々の力量は落ちたように思いますが、オケとしての仕上がりはさすがに宇宿です。まずは、ポピュラーな「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」。明るくリズミカルに奏でるのではなく、どこかはかなげで、哀愁を帯びたように仕上げていて、しかもくどくなくさらっと聴かせてくれます。続いての「ヴァイオリンとヴィオラの為の協奏交響曲」はコンミスソリストを務めたのですが、弓の滑りが不調のようで、高音が震えてしまったり、アタックが引っ掛かったりしていました。これは正直言って、やや期待外れ。

そして休憩をはさんで「交響曲第40番」です。この曲の第1楽章は、僕がヴァイオリンをはじめた高校の室内楽部で最初の文化祭公演のメイン曲だったということで、思い入れがあるんです。モーツァルトにはめずらしい短調のせつなさをかなり直接的に表現していました。宇宿の真髄発揮というところでしょう。

アンコールの前にはお約束の口上がありましたが、ステージでMCまでこなしてしまう指揮者は、僕は彼と小林研一郎しか知りません。昔はもっと勢いがある宗教チックな話だったけど、お年のせいか少しアクが抜けた感じがします。アンコールはブルックの序曲で、弦の伸びやかな音を楽しませてくれました。クラシックのコンサートは久しぶりでしたが、リラックスした気分になれるのでいいですね。