【オリジナル小説】駅でゴドーを待ちながら

Tのホームページで、新作小説「駅でゴドーを待ちながら」を連載開始しました。ベケットの古典戯曲「ゴドーを待ちながら」のパロディではなく、モチーフを現在に置き直し、解釈し直そうというものです。今日のアップは序の部分なので、今後にご期待ください!

作品はこちらから
http://homepage3.nifty.com/tata/

<冒頭の部分を、ちょっとだけ紹介>
私は、いつからここに立っていたのだろう。そして、どこからやって来て、ここにたどり着いたのだろう。視線の先の焦点が合った瞬間、私はそれまでのすべての過去を忘れ去っていた。いや、忘れていたわけではない。思い出すことを放棄してしまったのだ。仕事も家族も、今朝何を食べたのかも、自分の名前さえも。そして、私は気づく。自分が立っている場所がどこかの駅で、改札口に向かって柱に寄りかかっている。たくさんの人が、電子顕微鏡の画像のように動いている。大きな流れがあり、それに抗おうとする支流があり、停滞している一団がある。私は、それらの光景から一歩引いた位置にいて、直接的な関わりは持っていないような気がした。