【イングランド】エリクソン采配を解く

引いて守るトリニダード・トバゴに苦しみながらも、終盤の2得点で振り切ったイングランド。意図の明確な采配をふるうスウェーデン人監督のスヴェン・ゴラン・エリクソンの戦術について考えてみた。まず今回のイングランド代表の顔ぶれを見て気がつくのは、スタメンが明確だということだ。DFのキャラガーとネヴィル、FWのルーニーオーウェンクラウチの辺りで多少迷うかもしれないが、中盤に関してはランパード、ジェラード、ベッカムジョー・コール以外の選択肢は考えにくい。つまり、他の選手は途中交代で出場することがわかっているわけで、その役割もわかりやすい。

ハーグリーブスパラグアイ戦のように、中盤の守備を固めるときに投入され、ランパードとジェラードが前線のサポートをしやすくする。そしてダウニングとレノンはサイドを活性化し、前線のクロスを送る仕事だ。終盤でビハインドの場合、長身のクラウチを下げることは考えにくい。前線を1枚削っても、質の高いクロスでクラウチ勝負ができるからだ。

そこでトリニダード・トバゴ戦だ。レノンはサイドを駆け上がってチャンスメイクはしたが、代表落ちしたショーン・ライト・フィリップス同様にクロスの質は低かった。しかし、レノンが右サイドの前でかき回すことで、サイドバックともいえるポジションに陣取ったベッカムのマークが薄まり、彼の持つ絶妙のクロスの威力が増す。つまりレノンの役割は、ベッカムクラウチのホットラインをつなげるための警備員だったのだ。

ただ、このエリクソンの人選は、累積警告などでスタメン選手が出られなくなる場合の戦力ダウンは避けられない。厳しさを増す決勝トーナメントでの戦い方にも、ぜひ注目してみたい。