恩田陸・『恐怖の報酬』日記

女流作家・恩田陸(おんだりく)の世界は、ちょっと独特のものがある。本屋でたまたま見つけたこの本を買おうかどうしようか迷いながらめくっていると、書き出しが「これは紀行文である。気軽に読める旅行エッセイのはずである」とあった。なかなか興味をそそられるではないか。紀行文のはず、旅行エッセイのはずということは、実はそうでないということだ。これは読んでみるしかない。

そして読んでみて、僕は悟った。これは紀行文でも旅行エッセイでもない。それらを読みたかったら、僕のホームページとブログを読んだ方がずっといい(^^; 恩田陸のこの作品は、「飛行機嫌いが飛行機に乗って、大変だった話」なのである。旅先であるイギリスとアイルランドの描写もあるにはあるのだが、そこは作家の目と言うフィルターを通しているので、異国情緒がまるでない。ロンドンが浅草でも、ダブリンが横浜でも一向に構わないような内容なのである。

ではおもしろくないかと言うと、そうでもない。恩田陸ファンが、彼女の人となりを知るにはよい本だと思う。意外にこの人、俗っぽい発想を持っているんだなあと感じるにはおもしろいだろう。要はコレクターズ・アイテムということだね。