【映画】デッドプール

マーベルの映画作品としては「亜流」の位置づけだけに、セックスシーンもあれば際どいネタも満載。そもそも吹替の一人称が「俺ちゃん」という時点で、キワモノ感が漂ってしまう。ただ、これはあくまで字幕翻訳の問題であり、過去の流れを踏襲したもの。キャラクターを一部のファンのものに留めずにおくためには、過去からの離脱も検討した方がよいだろう。

ダイバーシティインクルージョンの視点では、2016年ならギリギリかもしれないが、今だったらアウトの人種ネタも散見される。イメージの悪い単語の羅列に「黒人」を含めている場面や、視覚障碍者を「揶揄」するような場面は、炎上のための燃料になってしまう。一方で「女性=弱い」というステレオタイプからは逸脱しているので、そこまで含めてあえてシニカルなメッセージとして盛り込んだのかもしれない。

ヴァネッサ役のモリーナ・バッカリンは、「ホームランド」のブロディ夫人。「ビリオンズ」でダミアン・ルイスの演技を見続けている最中だったので、二人とも当時よりメリハリの効いたスター俳優らしい演技と設定になっているところに時代を感じた。

終盤のクライマックスで使われる音楽は、Chicagoの「You're the Inspiration(邦題: 君こそすべて)」。速度を変化させながら、場面を彩る要素として使われている。1984年に出たアルバム「Chicago 17」に収められている曲なので、この映画の公開時にはすでにオールディーズ的な存在ではあるが、シングルカットされたわけでもない。そんな曲を、うまく使ってくれたという印象だ。