【ドラマ】ザ・テラー シーズン1

19世紀の実話であるフランクリン遠征隊の北西航路開拓をベースにしたフィクションだが、実際にあったエピソードが散りばめられているので興味深いし、過酷さがよく伝わってくる。グリーンランドの西側から北米大陸の北を抜けてベーリング海峡に至り、中国やアジアに到達しようとする英国海軍の遠征だが、現場の過酷さとロンドンの政治家たちの自己保身の対比が浮き彫りになる。

遠征隊は十分な食料を積んでいたのだが、栄養の偏りを起因とする壊血病に加えてハンダづけ不良の缶詰によって鉛中毒が引き起こされたらしい。史実としては、遠征隊の二隻の艦船は氷に閉じ込められて遺棄せざるを得なくなり、ホッキョクグマを凶悪化させたような怪物の襲撃や過酷な気象状況から誰一人生還する者はいなかった。艦船も発見されたのはつい最近であり、歴史に残ることの大半は推測でしかないのだ。

ヒッキーという隊員がカルト教団の教祖のようになり、存在感を増してゆくあたりの描写にも恐ろしさがある。最終的には自身のカリスマ性に溺れて壮絶な最期を迎えるのだが、これは悪のカリスマに向けた呪いのように感じる。そして最終的に怪物と反乱一派を根絶させた毒物を仕掛けたグッドサー解剖医の行動にも、極限状態で取り得る「最善」の選択肢という意味では人間の善意の強さを感じざるを得なかった。