【映画】ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男

テニスの1980年ウィンブルドン選手権男子シングルスの決勝を中心に描いた作品だが、ドキュメンタリー映像を使わずに鵜役者にすべて演技させたことは、テニスファンにとってはリアリティに欠けて物足りない。ボルグとマッケンローを演じる役者は似ているとはいえ、筋肉や動きという意味ではプロテニスプレイヤーらしくなく、見る者は劇空間だと認識した上で頭の中で置き換える必要がある。

ボルグとマッケンロー、ふたりの名前を冠しているものの、ストーリーとしては勝者ボルグの視点で描かれている。作品の流れからすれば、ここはマッケンローの視点で描いた方がラストのメッセージが強まったのではないだろうか。貴公子と悪童というイメージは拭いようもないが、勝者のノーブレス・オブリージュとして描くより、敗者が得た勲章とした方が僕にはより受け容れやすかったと感じるのだ。

まあ、本作がスウェーデンフィンランドデンマークの共同製作ということを考えれば、ボルグ視点であることは必然なのだろう。全体的には余計な要素を加えずに純粋にアスリートの心理を描いており、スポーツファンとしてもポジティブに受け止められる。ストレートに楽しめる。