風に散る桜のしたたかな夢

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東京では桜が満開だ。しかし、満開の報せを聞いた翌日には強風が吹き荒れ、すでに花びらの多くが路上の塵と化してしまった。桜の季節といえば、風も強く吹くし、雨も降る。それまでの短い楽しみだからこそ、人は桜に焦がれるのだろう。

では厳しい環境に好んで花を咲かせる桜は、マゾヒスティックな生物なのであろうか。僕には、そうは思えない。植物は自らの意思でできることが限りなく少ないので、鳥や虫や風といったものを媒介しなければ種を残せない。であれば、風がこれだけ効果的に吹く時期に花弁を開けば、受精する可能性を高めることができるはずだ。雨も降る時期なので、成長に必要な水分を確保することもたやすい。そう考えると、実は桜は非常にしたたかな生物で、計算しつくされた「成長戦略」の実践者なのかもしれないと思う。花の命の儚さにばかり目を向けてしまうのは、桜の「擬態」に騙されているだけなのではないだろうか。

画像は、東京・音無親水公園の夜桜。桜を愛でながら感じた種の伝承というテーマを、小説に膨らませてみたいと思っています。