【名場面】磐田・ドゥンガのFK

その年、横浜フリューゲルスは優勝争いを演じていた。リーグも終盤の三ツ沢でのホームゲームで、相手は相性の良くないジュビロ磐田だった。1点リードしたフリューゲルスに対し、ジュビロペナルティエリアやや外側の左サイドでFKを得る。GK楢崎正剛は壁の枚数を指示する。キッカーの位置にはドゥンガひとりが左足で、飛び込む選手のヘッドに合わせるボールを狙っていた・・・かのように見えた。

そしてドゥンガは一度ボールに寄って位置を直すと、何食わぬ顔で助走に入る。しかし、方向が違ったのだ。彼は「右足」で蹴る方向へ突然進路を変えた。そして蹴ったボールは、壁とGKの読みをあざ笑うかのように、サイドネットに吸い込まれていった。流れはすっかり変わり、結局1-2でフリューゲルスはこの試合を落とし、優勝戦線から脱落したのだった。

フリューゲルスサポーターだった僕には嫌な思い出ではあるが、「これがマリーシア(ずる賢さ)だ」と言わんばかりに勝負の綾を見せてくれた闘将ドゥンガには、ある意味感謝している。