フットボールは文化だ

試合開始を目前にして、味の素スタジアムに選手紹介が鳴り響き、そして終わる。そこからはFC東京サポーターの独擅場だ。「You'll Never Walk Alone」という歌をゴール裏サポーターを中心に歌い上げるのだが、FC東京には特に多い男性サポーターの中低音が終盤にかけてクレッシェンドしていく様は、感動的ですらあった。その昔、前身である東京ガスサッカー部の試合を江戸川競技場で見たときには、ゴール裏では数人のサポーターが青い傘を上げ下げして東京音頭を奏でていた。ヤクルトスワローズの二番煎じである。その後J2に参戦するころには、日本代表サポーターの仕切り屋としてテレビにも出演していたU氏を中心に、唯我独尊、聞いていて確かにおもしろいのだが、応援というよりも自己満足に近いようなコールに変わった。そして、今ではここまで進化したんだ。これはまさに、Jの立ち上げから10数年かかったけれど、フットボール文化が着実にこの国に根付いてきたということじゃないだろうか。僕にとっては、ほんとに喜ばしいことだ。代表戦に一喜一憂するだけではなくて、社会人や学生リーグ、ユース、女子も含め、底辺の拡大がなければ強くならない。それを作るのは間違いなく、目の肥えた観客であると僕は思う。