【ミュージカル】アメリカン・イディオット

グリーンデイのアルバム「アメリカン・イディオット」を中心に「21世紀のブレイクダウン」からの楽曲を交えて構成したミュージカルの来日公演を、東京国際フォーラムで鑑賞しました。当日券だったのですが、前から6列目の上手側の席でした。かなり空席が目立っていたせいで、リピーター割引なども導入しているようですね。

率直に言って、この作品はターゲティングが不明確です。米国であれば「家族」「愛」というキーワードはキリスト教とも相俟って説得力のあるストーリーになりますが、日本ではそうもいきません。「軍」「銃」「ドラッグ」もピンとこない観客に対して見せるのは、簡単ではないでしょうね。構成も終盤にノリのよい曲で盛り上げるのではなく、中盤に「21 Guns」で一度ピークを持ってきた後はどうにも締りが悪い印象です。観客がグリーンデイやパンクロックになじみのある層ではなく、ミュージカルフリークというよりも「盆休みにチケットが取れたミュージカルを見に来た」感じでしたが、それがこの作品のポジショニングを一層難しくしてしまったのでしょう。

ただ、僕はとても良い印象を持ちました。ここで描かれる閉塞感とカタストロフは決して米国特有のものではなく、日本でも通用するし、そして僕自身も味わったことがある感情なのです。そんなネガティブな思いを起点にさまよった若者が故郷に帰って来る流れに、自分の家族とのわだかまりがすべて許せてしまうような気すらしました。何か個人的なシンパシーさえ感じられれば、この作品は輝いてくれることでしょう。そうでないと、何だかわからないまま終わってしまいかねません。

http://www.aidiot.jp/