【東京国立博物館】写楽特別展

東洲斎写楽については、以前勤務していた会社が製作に参加した映画「写楽」を見ていたので、予備知識はありました。彼が活躍した期間は、わずか10ヶ月。その間に150点ほどの作品を残して、忽然と消えてしまったと言われています。

東京国立博物館・平成館で開催されているこの展覧会は、震災の影響で会期が変更になったものの、ニューヨークやホノルル、ブリュッセルなど海外からの出品も含めて彼のほとんどの作品を網羅した大々的なものなのです。一番驚いたのは、10ヶ月という短い活動期間ながら、その間の画風の変遷が激しいこと。写楽の代名詞ともいえる派手な構図と表情の描写で知られる「市川蝦蔵の竹村定之進」や「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」は、完成された画風ではなく初期の作品だったのです。

末期になるにしたがって、彼の作品は特徴を欠いた「普通の」浮世絵になってしまいます。それが市場の論理によるものなのか、彼の中の事情なのかはわかりませんが、個性を失ってしまったことが突然の絶筆につながるのかもしれません。そんなことを考えながら鑑賞するのも楽しいですよ。作品の展示位置が低めなので近寄って見るには適していますが、誰かが立ち止まって占領してしまうと他人にとってはいい迷惑です。混雑する展覧会では、考え物ですね…

http://sharaku2011.jp/