【刑事雪平夏見】殺してもいい命

篠原涼子主演でテレビドラマでも人気を博した「アンフェア」の続編、秦建日子(はたたけひこ)の「殺してもいい命」が河出書房新社から発売されました。ドラマでは相棒の安藤刑事を犯人にしてしまったのですが、小説ではこのコンビが健在です。本作では安藤の成長ぶりが描かれているのに、もうドラマでは作りようがないところは残念ですね。

今回も刑事という職業に徹するクールな女・雪平夏見が、自分のルールに従って事件にぶつかっていきます。ドラマでも重要な役柄だった登場人物が殺害されてしまう展開ながら、あまりウェットに描くのではなく、あくまでさらりと当たり前の日常だと言わんばかりなのです。秦建日子らしいリアルな会話やテンポの良さがアクセントとなって、この小説を支えています。

ただ、若干気になる点もあります。リストラを担当する人事部長が単なる数合わせの「クビ切り」を、何らの事業運営上の裏づけもないまま受け入れてしまう点は、人事が職業の僕には納得がいきません。そして、安藤刑事が雪平に飲みに誘われて出掛けたのに帰路には車を運転しています。何か説明があれば受け入れられるのですが、何もそのあたりの事情が語られていなかったので、違和感が残りました。

エンディングも、シリーズものではよくある「思わせぶり」なもの。次回作があるのかないのか、読者をもてあそぶような手法はあまり好きではありません。作品としてはよく出来ているので、十分楽しめるのですが…