【湊かなえ】使い捨ての出版界

「告白」で本屋大賞を獲得し、「少女」でその文体や構成を確立した感のある湊かなえ。彼女が作家として成功するかどうかを決めるのは、次の3作目だと思っていました。同じような作品を出してしまえば、それは作家としての限界を露呈したことになるのではないかと。

そして、その懸念は現実のものになってしまいました。「贖罪」の構成はこれまで通り、いくつかの糸が収斂していくようなものでしたが、結末はあまりにも普通なのです。手紙のような表現を使った「乾いた」文体の魅力も、ここまで徹底されると食傷気味です。

これは作家の限界というよりも、性格には出版界の問題なのでしょう。作家を育てるよりも、旬なうちに使い尽くしてしまう。そんな嫌らしさが垣間見えてしまうのも、またこの作品です。約1年の間に、同じような作品を3冊も出してしまえば、ネタも尽きて当たり前。それでも「告白」がまだ平積みで売れているうちに、自社から新刊を出したかったのでしょう。3冊とも違う出版社から出ているというあたりも、業界に潰されるか弱き作家の行く末を表しているようです。

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