【ピサロ展】白の魔法

東京駅の大丸ミュージアムで開催されているピサロ展を鑑賞してきました。この展覧会は、英国オックスフォード大学のアシュモリアン美術館蔵の作品によるものです。ピサロだけではなく同傾向の風景画が多く展示されているのですが、ピサロの描く雪の白が展示室の中でも独特のオーラを放っていました。特にチュイルリー庭園を描いた一枚は、パリで訪れた庭園の時間が止まったような優美さや、高い空を思い起こさせてくれました。

風景画のイメージが強いピサロですが、点描画の作品や人物などもあり、意外な一面に出遭えます。僕が一番長く見入ってしまったのは、「うちわを持つジャンヌ」の少女が見せているうつろな表情でした。この一瞬を切り取った表情は、なかなか雄弁で興味深いです。ただ、一方で気づいたのはピサロの描く構図がアンバランスなこと。対象のはずの人物が中央にいなかったり、風景も妙なところで切れていたり。これは全体のバランスよりも、描きたい部分のフォーカスを優先したのではないかと思えます。

この他、ピサロの子どもたちの作品も展示されており、ピサロとの共通点や異質な部分を見ていくのもおもしろかったですよ。それほど作品数も多くないし、有名な絵画があるわけではないけれど、ゆったりした気分に浸るには十分です。ただ、東京駅の大丸に併設されているだけに、客層が観光客中心と見受けられました。アカデミックさからは、ちょっとほど遠い雰囲気ではありました。

http://www.daimaru.co.jp/museum/tokyo/pisaro.html