【湊かなえ】「告白」に込められた悪意

最近、新聞やテレビなどでも話題のこの作品。読み始めて最初に感じたのは、文体の「軽さ」でした。ある教師が生徒に語りかける場面から始まるので口語体は当然ですが、それがとても自然なだけに、かえって文学的な意味では疑問を持って読み進めることになります。章ごとに語り手が変わっても、その傾向は変わりません、しかしながら、この作品は読めば読むほどその世界観に引きずり込まれてしまうのです。

何を書いてもネタバレになりそうなので、できるだけ内容には触れないようにします。この作品はもともと前半が章ごとに雑誌に発表したもので、後半が書き下ろし。つまり、章ごとに独立した作品としても読めるし、連作としても読めてしまいます。それでもなお各章に後続の章の語り手やプロットに対する伏線もきっちりと張り巡らされており、構成も見事です。以前読んだ内田春菊のコミック「シーラカンスOL」には、チョイ役で登場した人物が次の話の主人公になるという手法が使われていたことがありますが、まさにこれと同じ手を使っていますね。

最後の最後にあるオチは、それまでの意外な展開からも想像できないようなもので、最後まで気が許せません。この作品に込められた毒というか悪意には、底知れぬ恐ろしさを感じます。抑えが効いているだけに、かえって根の深さを感じてしまうのです。一気に読めてしまう分量であり、そして読ませてしまう展開力を堪能してください。

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