【オルセー美術館展】不統一のバラエティ

かつてパリのオルセー美術館を訪れたとき、駅舎を改造して作ったその展示室を巡る楽しさとともに、配列の取り留めのなさを感じました。あまり機能的とはいえない構造の部屋に無秩序に、そしてあまり意図も脈絡も感じられない展示が何段にも連なっていて、一点一点の作品が軽視されているような印象を受けたのです。

そして上野の東京都美術館で再会した作品たちを見て、あの取り留めのなさはオルセー美術館の構造によるのではなく、そのコレクションにあったのだと認識します。はるばる東京にやってきたこの展覧会を見ても、混沌としたミクスチャーを巡る楽しさ以外には全体を通した統一感がなく、それこそが先日記事にしたポンピドーセンター展のストーリー性の対極にあるものなのでしょう。

ポスターにも使われているマネの「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」とルノワールの「ジュリー・マネ」を見ると、その対象を捉える方法論がいかにも日本のイラストやコミックに類似しているように思いました。デフォルメの仕方が、日本人の美的感覚にはわかりやすいのではないでしょうか。

ホイッスラーの「画家の母の肖像」を見ると、どうしてもMr.ビーンの映画を思い出してしまうので、直感的に鑑賞できなかったのは残念でした。一番よかったのはモネの「ルーアン大聖堂」で、カテドラルの質感や素材感が光のカクテルに溶け込んで幻想的な光景です。以前、ヴェネツィアで夜明けに朝もやの中に浮かぶ教会を見たときの鮮烈な印象が蘇りました。パリ郊外の空の青さと近さもそうですが、やはりヨーロッパ絵画は現地での体験があると一層楽しめます。

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