【アンフェア】原作「推理小説」

篠原涼子香川照之が好演するテレビドラマ、「アンフェア」の原作を読んでみました。予想通り、テレビのストーリーとは微妙に違うというか、テレビの方が小説の先まで続く話のようです。著者・秦建日子の文体の裏に潜む、ちょっと危険な「毒」がスパイスとなって効いています。それは、村上龍が「コインロッカーベイビーズ」や「愛と幻想のファシズム」で描いたカタルシスに通じるものがあるのではないかと感じました。

著者の出版界への、あるいは小説や小説家への思いが、率直で自虐的な言葉として登場人物の口を通じて語られるとき、なんとなく自分の心のどこかにある隠れた思いが、気化して体から立ち上るようなそんな気がしたんです。わかりやすい例をあげると、「三流小説には、珍妙な当て字の登場人物が出てくる」という内容の文章があり、これには僕も大いにうなずくのですが、この著者からして「秦建日子(はたたつひこ)」なんて、どう見ても「珍妙な当て字」です(^^;

主人公の刑事・雪平夏見は、まさに篠原涼子だし、他の役者じゃダメだったなとしみじみと思える原作です。あっさり読める分量なので、予定のない週末にお勧めです。