【舞台】ウィキッド・スペシャル:忘れられない一夜

LAのドルビーシアターで一夜限りの開催となった "One Wonderful Night" は、ミュージカルというよりもバラエティショーのライブステージと呼ぶ方が正解だろう。シンシア・エリヴォが緑ではなく黒を基調にした衣装を纏いながらも、エルファバらしい歌声を聴かせてくれる。そしてピアノはジェフ・ゴールドブラム。最近では「KAOS」の出演が印象に残っているが、彼の場合はどんな役を演じても自分の色に染め上げてしまう。

ミシェル・ヨー車いすに乗ったマリッサ・ボーディも登場し、映画の音楽を担当したスティーブン・シュワルツは別会場での映像でピアノを聴かせてくれる。クラシックギターとヴァイオリン、チェロのアンサンブルをバックに歌うシンシアも味があった。90分弱という短いプログラムなので、気負わないで気軽に楽しんだ方がよいだろう。 

劇場を埋め尽くしたオーディエンスは最初からノリノリで、あたかもショーの一部であるかのよう。コスプレ姿でシンガロングしたり声援を送ったりする様子は、いかにも米国でのエンタメの楽しみ方そのものだ。仕込みも入っていそうだが、シンシアがマイクを向ければプロ顔負けの歌声を聞かせたり、緑色に顔を塗ったファンはとぼけた味で会話をつなぐ。

ビデオメッセージに登場した4歳のレミントン君をステージに上げたシーンでは、割と寡黙なレミントン君にアリアナがかなり気を遣って見えたことが印象的だった。そして彼がステージを下りたときには、会場総立ちのスタンディング・オベーションだった。これもまた、ステージ文化が成熟した米国ならではだろう。