【徳島―大分】選手起用の不合理

前節の惨敗と、巻き返しに向けてまったく方向性の見えない状況に現地サポーターがようやく怒りを爆発させたが、大分トリニータは公式に、

『クラブとしては、残り8試合を片野坂監督体制のもと、選手・スタッフ・フロント一同が団結し、大分トリニータのフィロソフィーである、「諦めない、一体感、アグレッシブ、ハードワーク」を改めて全員が心に刻み、必ずJ2に残留するという強い覚悟をもって戦い抜く所存です』

という社長コメントを発表していた。

そして、今節だ。結果も悲惨そのものだったが、その前に片野坂監督が送り出した選手起用はこれがベストだったのか非常に強い不満が残る。決して侮れない徳島相手に、ペレイラをベンチに置いてデルランは帯同させず、センターバックが本職ではない吉田に続いて野嶽まで起用した。

野嶽は器用な選手で守備力もあることは承知しているが、この状況のこの試合で、前節3失点した守備陣をさらに弱体化させる意図は何なのか。吉田はヘッドでのクリアを相手に渡し、野嶽は裏を取られたのは結果論で、風が強かったという要因もあったのかもしれないが、この選手起用がチームの迷走を象徴しているではないか。社長も監督も、何を考えて今節に臨んだのか見えてこないし、そもそも冒頭の言葉が軽すぎる。

前半の内容は本当に酷く、DFラインでボールを回す選手の視界には横の選手と下りてくるボランチまでしか入っていない。ボランチの先の展開を考えずに、出せるところに出しているだけなので、そのボールはすぐに戻ってくる。野村にもかつての輝きはなく、U-19日本代表でこの後離脱する保田は空回りするばかりだ。

あと7試合、片野坂体制の堅持を公言してしまった以上、本人の職場放棄以外にそこが変わる可能性はない。ブラジル人選手を冷遇するのは田坂監督からの伝統で、片野坂監督はJ1からの降格が決まってから、天皇杯ペレイラエンリケトレヴィザンをようやく併用するようになったほどだ。まずは、ベストな布陣。ディフェンダーはパスをつなぐことより、相手の攻撃を遮ることこそが役割のはずだ。窮地で自分の好みの選手を使って「自爆」した石崎監督の二の舞だけは、何としても避けてほしい。