【人事の話】人財と人材

世の中には、人事部門を「人財部」と称している会社があります。英語の「Human Resources」の訳語とも言えますが、人を財(たから)だと思っているという意思表示の要素も大きいように思います。しかし、僕はこの表記が好きではなく、自分が人事の仕事をしているときに上司が「人財」を使おうとしても、あえて抵抗していました。

財は確かに「たから」という意味もありますが、同時に「所有物」ということでもあります。社員が、土地や設備備品と同じような会社の持ち物であるという考え方には、僕は同意できないのです。そもそも就業規則をはじめとするルールで縛り付けておいて、「あなたは会社にとって宝物ですよ」と言われても、綺麗事にしか思えません。

そしてもうひとつ、マネジメントの本にときどき出てくる表現ですが、「人財/人材/人在/人罪」という言葉遊びで「優秀な社員をしっかり処遇しよう」というようなストーリーがあります。このような使い方では人財は一部の社員でしかなく、これとセットで「人財部」を考えると、「優秀な社員だけを相手にする部門」という捉え方もできてしまいます。

一般的な日本語とはあえて異なる表現をする場合には、よほど注意しないと墓穴を掘ることになりかねないのです。同じ意味合いで「障がい者障碍者」という言葉も、僕は使ったことがありません。