【ミステリー】中山七里「贖罪の奏鳴曲」

第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した、中山七里のミステリー「贖罪の奏鳴曲」を読了しました。謳い文句である「どんでん返し」の結末はある程度想定できてしまいますが、奇をてらうだけではなく納得感のあるエンディング。予想された結末に向けて「その展開に持って行って大丈​夫か?」という思いを抱かされますが、それに対する明確で共感できる答えが用意されています。

主人公の弁護士の名前「御子柴礼司」がいかにもですが、実はこれは「実名」ではないという設定。外しそうで外さない、ぎりぎりの線を狙っているのでしょうか。この作者の文体は口語が文語っぽく、いかにも文学オタクが使いそうな表現が多用されます。会話にリアリティのない作品が好きではない僕ですが、その点でもぎりぎりセーフのラインです。

中山七里は音楽ネタを得意としているようですが、この作品でモチーフとなっているベートーヴェンの「熱情」を語る部分での描写では、僕の音楽センスにはヒットしませんでした。こだわりのポイントが違うのだろうということが、テキスト表現からも伝わっています。

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