【よしもとばなな】どんぐり姉妹

よしもとばななの著作は僕の感性に合っているのだと、最近強く感じるようになりました。大きな事件が起きるわけでもなく、淡々とした現実の中で動く感情を捉える感性が、自分に近いように感じているのです。そんな彼女の新刊「どんぐり姉妹」は、タイトルからして微妙な印象を受けます。ところが、この作品もまた、静かにしかししっかりと人の感情を綴っていて、安心させてもらえました。

「どんぐり姉妹」とは、双子でもないのに「どん子」と「ぐり子」と名づけられた姉妹が、ネット上でお悩み相談のようなサイトを運営するという設定。ただ、ネット上でのやり取りの描写は少なく、それよりも姉妹の性格の違いや、それでもお互いの生き方をしっかりとリスペクトする価値観が語られます。姉妹は過去の家庭環境で辛い思いをしたという設定なのですが、決して重い展開にならないのはさすが「ばなな節」ですね。

作品の中に、鈴木親氏による写真が折り込みページとして差し込まれているのですが、内容との関連が薄くてピンとこないし、見るためには「折り」を開かねばならないので通勤中の読書には不向きでした。

http://www.shinchosha.co.jp/book/383409/