【1Q84】BOOK3で完結なのか?

予想通りBOOK2では終わらず、出版されたBOOK3。そして今回もまた、微妙な終わり方で読者に謎をかけたまま終わっています。ストーリーとしては一区切りついてはいるものの、新たな世界へのシフトとも取れる伏線のようなモチーフが投げかけられ、巻末には「BOOK3 終わり」と記されているのです。続いてくれた方が、こちらとしてはありがたいのですが…

ストーリーは川奈天吾と青豆雅美に、牛河を加えた3人のプロットが交互に登場します。初期の村上春樹は「僕」を主語に主人公が語る形式だったのですが、「ノルウェイの森」で「ワタナベトオル」という名前のある主人公を設定してからは、この形式が定着しているように思います。天吾のプロットでは天吾の視点で、青豆のプロットでは青豆の視点で、しかし主語は「僕」や「私」ではなく「天吾」であり「青豆」なのです。終盤では、青豆に語らせている語り部(?)の口調が青豆に寄っている部分があることから、この物語の実質上の主人公は青豆雅美なのだろうと思いました。

初期の三部作「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」で築き上げられ、「ノルウェイの森」「ダンス・ダンス・ダンス」で結実したファンタジックな春樹ワールド。「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の並行したプロットが収斂する手法。そして「ねじまき鳥クロニクル」のそれぞれの巻ごとにある程度完結しながら、続編が紡がれてゆく手法。「1Q84」はそれらの集大成のような作品です。リトルピープルや空気さなぎといった仕掛けが、かつての羊男のような非現実感をほどよく醸し出していて、昔からのファンはうれしいですね。

話の核はわかりやすくはないですが、作家の中ではしっかり出来上がっている世界なのだろうと思います。やや不満なのは「タマル」という、この展開にするには便利なキャラクターを駆使しているところでしょうか。

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