【Bunkamura】ピカソの思い、クレーの完成度

渋谷のBunkamura・ザミュージアムで開催されている展覧会「20世紀のはじまり ピカソとクレーの生きた時代」を、金曜日の夜間開館を利用して鑑賞してきました。そこそこ人は入っていましたが、昼間や週末の混雑とはほど遠く、ゆったりとした時間を過ごすことができます。

表題は「ピカソとクレー~」ですが、最初のコーナーではマティスシャガールなどの作品が迎えてくれます。展示がややわかりにくい分類に沿ったものになっているため、絵画を「味わう」というよりは時代背景や主義といった学術的な視点で「学ぶ」形になります。最近はこの手の展示が多いですね。序盤は有名な画家の作品でも、クオリティはあまり高くないものが目につきました。展覧会の中盤で目を惹いたのがルネ・マグリット。いかにも彼の作品らしい、写真をレタッチしたような大胆な構図に興味をそそられます。

終盤になって、まずピカソの作品がまとまって登場します。この展示を見るだけで、彼の作品のアプローチが多彩であることに、あらためて感心させられます。「鏡の前の女」に見るキュビズムシャガールを思わせるような肉感的なデッサン。そのどちらにも、彼のほとばしるような意図が感じられ、やや荒っぽさも残る作品に焼き付けられた思いが伝わってきます。

一方、最後に登場するクレーの絵画では、画家の意図は計算しつくされた形で、画面に表現されています。抽象とは、つまりは画家の美意識が理路整然と描かれたものなのではないでしょうか。カンディンスキーの画風が完成される前の作品も展示されていましたが、ここから彼の抽象画が完成していったことを考えながらクレーの作品を見たために、一層クレーの緻密さが窺えたのです。

http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/09_k20/index.html