【UEFAチャンピオンズリーグ】雨の悲劇

雨の降りしきるモスクワで激突したイングランドの両雄、マンチェスター・ユナイテッドチェルシーチェルシーにとっては、オーナーであるアブラモビッチの地元での決勝だ。クリスティアーノ・ロナウドの自信にあふれた先制点と前半のユナイテッドの動きを見る限り、流れは明らかに赤い悪魔にあった。ところが、前半終了間際に青きエース・ランパードが同点ゴールを決めてからは、流れは変わった。クリスティアーノの自信あふれる表情には翳りが差し、テベスは空回りしはじめていた。

最後の最後までもつれそうな展開の中、ドログバがいかにも愚かな暴行行為で一発退場を喰らう。しかし、チェルシーはこれでPK戦へ持ち込むモチベーションが高まっただろうから、戦いやすくなったかもしれない。PK戦に入れば、ツェフとファン・デル・サールという実力もサイズもあるGK同士の戦いも見ものになる。

さて、そしてもつれ込んだPK戦。クリスティアーノが外したのは、僕の予想通りだった。前半から後半にかけて思うようなプレーが徐々にできなくなっていった彼には、この局面でのプレッシャーを跳ね返すのは難しかっただろう。しかし、まさかテリーが外すとは思わなかった。軸足が降りしきる雨を含んだピッチにすくわれてしまうという、まさに雨がもたらした悲劇だった。

そしてチェルシーの7人目で登場したアネルカ。僕はこの時点でチェルシーの敗戦を覚悟した。彼はこういう最高の場面でヒーローになれない選手なのだ。そして予想通りPKは止められ、万事休した。目立たなかったが、ボールのない部分で動き回っていたテベスジョー・コールには、最大限の拍手を贈っておきたい。