【オーストリア戦】サイド攻撃の罠

クラーゲンフルトで行われたサッカー・三大陸トーナメントの日本対オーストリア戦は、内容的には日本の完勝だったと言ってよい。結果としてはPK戦で負けたわけだが、この大会で重要なのはタイトルではないことは選手も監督も同じ思いであろうから、それは問題ない。しかし、攻勢に見えた攻撃から得点が生まれなかったのは、何故なのだろうか?

この日の日本代表は、いつもよりサイド攻撃が機能しており、加地と駒野から遠藤、俊輔へのつないで何本も質の高いクロスを上げた。それを受ける役目の矢野も、僕が思っていた以上には前線で頑張っていた。しかし、矢野と田中達也の2トップで、得点の可能性がより高いのは間違いなく田中のはずだ。サイドからのクロスに偏重した攻撃で、田中のスピードと思い切りの良さは生きるだろうか。ここに、この試合で日本代表が陥った罠がある。サイドが破れるから、そこを突く。中央を経由してサイドチェンジして攻める。その結果、田中のドリブルや裏へ抜ける動きは有意性を失った。

もうひとつ、稲本と鈴木啓太ボランチとしての相性も指摘しておきたい。稲本は中央を空けずに構えて、前を狙う「アンカー」タイプである。そして鈴木はパスの出し手としては決してうまい選手ではなく、守備から攻撃への基点となるタイプだ。確かに前には遠藤と俊輔がいるから十分という考え方もできなくはないが、ボランチからの攻撃のビルドアップや攻撃参加は、決して十分なものではなかった。

PK戦はおまけのようなものだが、今野を蹴らせたのはどうだったのか。アジアカップでも、精神的、技術的にベストチョイスではない羽生に蹴らせて失敗しているが、サブで入ったフレッシュな選手だからという理由を、オシムは過信しているような気がしてならない。