【映画版】嫌われ松子の一生

この映画のストーリーは実に物悲しいもので、どこにでもありそうな話でもあります。少しだけ進む方向を間違ったために、一瞬の判断がズレてしまったがために人生がどんどん悪い方向へ向かってしまう。そんな人物を、中谷美紀が好演しています。どちらかというと現実感を意図的に喪失させた「あり得ない」状況でデフォルメされた表情を作っているのですが、子どもの頃の笙(瑛太)に会うシーンのようにところどころで正統派の演技を魅せてくれ、その透き通るような表情がいいのです。

瑛太は、ドラマ「アンフェア」や「のだめカンタービレ」のような際どい役柄もこなしていますが、本作での場面ごとに様々な思いが去来する心理を演じ分けるあたりに、まだまだ潜在的な力を感じさせてくれました。役者としての官藤官九郎も、ストレートな感じで好印象です。ガレッジセールのゴリや劇団ひとりカンニング竹山にきっちり演技させていることにも好感を持ちましたが、その反面ボニーピンク土屋アンナ木村カエラなどは華を添えた程度でしたね。

ただ、僕はこのようなナレーションによって話が展開していく作品はあまり好きではありません。アメリカのミュージカル映画を意識したような作りはそれなりにおもしろいのですが、ひとつの主観の語り口に視点を固定されてしまうような感じがするのです。表面的なエピソードだけ追っていると、何が言いたいのかよくわからないで終わってしまいそうですので、自分の人生と対照させて見るとおもしろいのではないでしょうか。

本日から公開の「さくらん」も、この作品につながる「同じ空気」が流れていそうな予感がしますね。そちらも、そのうち見てみようと思います。

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