【モダン・パラダイス展】コンセプトは消化不良

竹橋の東京国立近代美術館で開催中のこの展覧会は、倉敷の大原美術館東京国立近代美術館のコレクションからモダンアートをより今日的な眼でとらえなおし、その魅力と可能性をさらに掘り下げるというコンセプトです。異なる画家のバックグラウンドやアプローチの作品をテーマごとに対比させるというコーナーを展開しています。

確かにおもしろい手法で、岸田劉生の「麗子肖像」を用いた対比では、愛娘を対象として描きながら岸田は写実的に、そして一方は印象派的な描き方。親から子への愛情こもった眼差しという同じ視点ながら、結果としてはずいぶん異なった印象の作品になっています。どちらも自分の目と脳というフィルターを通したイメージという意味では同じですが、そのことを明確に意識しているかどうかの違いだけと考えれば、なんとなく理解できます。ただ、他の対比ではいかにも無理やりなものがあり、いまいち消化不良でした。

音楽でも絵画でもそうですが、あまり二項対立させてAかBかという論議をしても意味はなく、作者がどのような思いで創作して、その結果どういうカタチになったかということを見極めるのが大事なのではないでしょうか。

日本人の作品とヨーロッパの画家の作品が混在しているので、これはどちらだろうと推理しながら見るのも、楽しいかもしれません。デ・クーニングやロスコの作品もあり、意外に内容は充実していました。

http://www.nikkei-events.jp/art/modern.html