【ロシア警備艇事件】外交は外交

根室の蟹かご漁船が、ロシア領海を侵犯して操業していたということで警備艇から威嚇射撃を受け、それを被弾した甲板員が死亡するという事件が起きた。北方領土は日露両国が領有を主張しているとはいえ、実効支配しているのは間違いなくロシア。仮に協定ラインを越えて、しかも無灯火で操業して装備まで捨てて逃走を図ったのだとすれば、銃撃されても致し方のないところだろう。北方領土の領有が未確定だとか日本固有の領土だとかいう理屈は、ここでは通らないと思うべきだ。

しかし、自国の法律に基づいた刑罰の執行は内政問題であるが、日露間の外交は別の話だ。仮に越境行為が事実だとしても、日本国民が射殺されたことについて抗議するのは当然だし、そこに至るまでの事実確認を厳しく求めていく交渉が求められる。それが外交なのだ。事実として自分たちに非があったとしても、国益になる部分を相手から引き出すのだ。アメリカも中国もロシアも北朝鮮も、当然のようにこういうことをしている。潔いかどうかなど、外交のテーブルでは関係ない。そのことを日本人はもっと理解すべきではないだろうか。

僕が伝えられている情報から推察するに、越境行為はあったのではないかと見る。そこまでしないと生活ができないという漁民の叫びが聞こえてきそうだが、その結果が日本の漁業全体、そして国際社会での日本の立場にまで影響を与えてしまうことは、教訓とすべきだろう。それは、本件が濡れ衣だったとしても、同じことだ。