【ワールドカップ】ジダンの行為は

サッカープレイヤーとしてピッチ上で頭突きなんてするものではないし、それがサッカーの頂点といえるワールドカップの決勝で、しかも自分の最後のゲームでなんてあり得ない。だけど、僕にはジダンの気持ちはよく理解できる。名誉よりも結果よりも、そして仲間やフランス国民やテレビ観戦している子どもたちのことよりも、そのときその場面で守るべきものが彼にはあった。それは、素晴らしいことだと思うし、僕がジダンでもきっと同じことをしていただろう。

「ずる賢さ」を意味するポルトガル語の「マリーシア」はよく引き合いに出して、サッカーは戦争だから勝つためには策を弄することが奨励される。でも、かつてJリーグのチャンピオンシップでPKのボールにつばを吐いたジーコが日本人に受け入れられなかったように、スポーツの潔さ、高潔さを忘れてはいけないと思う。だからといってマテラッツィのような選手にカードを出していたら、審判はゲームをコントロールすることが不可能になる。これを罰するには、試合後に協会やリーグがペナルティを課すしかないのではなかろうか。

ではマテラッツィは謝罪すべきか。僕は、スポーツの意義をより高いものにするためには謝罪してほしいと思う。しかし、それはあくまで本人の問題だから、強制しようとは思わない。話は飛ぶが、日銀の福井総裁と同じなのだ。倫理上、問題がないとは言い切れないことをやったのだから、自ら身を引くのはアリだ。でも、それはあくまで「解任」ではなく「辞任」なので本人が決めること。本人が選択しないのであれば、もう議論はそれで終わりだ。マテラッツィや福井総裁がその程度の人間なのだと認識する以外に、僕たちにできることはない。