【チャンピオンズリーグ決勝】ベンゲルの過ち

レーマンが退場になっていなかったら… この仮定には、ふたつの意味がある。ひとつは「アーセナルが11人で戦っていれば」、そしてもうひとつは「キーパーがずっとレーマンだったら」。

アーセナルは10人とは思えない動きでポゼッションサッカーを展開し、リュングベリの驚異的な突破とアンリの神業的なドリブルで何度も決定機を演出した。11人だったら、勝っていたかもしれない。そしてエトオベレッチの得点は、どちらも経験豊富なGKなら防げたことだろう。

しかし、勝負の世界だ。「たられば」の話をしても仕方がない。それでは、10人で1点を先制したアーセナルは、いつ流れを失ったのだろうか。その答えは、「75分のセスクの交代」にある。ベンゲルは運動量の落ちた中盤をテコ入れし、リュングベリとアンリをサポートさせようと、セスクを下げて地元フランスのフラミニを投入した。このとき、CKを蹴ろうとしていたアンリは息も絶え絶えにしゃがみこんでいた。そして、ゲーム再開。一瞬のブレイクで緊張の緩んでしまったガナーズの足は、この時を境に完全に止まってしまったのだ。

これも勝負の綾だろう、ベンゲルほどの監督であっても、わずかな交代時の気の緩みが、これほど大きな影響をもたらすとは思えなかった。それより、中盤をリフレッシュさせることで追加点を狙いに行ったのだ。このことは、監督経験の浅い日本代表の「神様」にも、ぜひ心に留めておいていただきたい。