【ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展】炎の灯り

上野の国立西洋美術館でジョルジュ・ド・ラ・トゥール展を鑑賞してきました。あまりよく知らない画家だったけど、広告で見た作品がフェルメールのような「光を描いている」ように見えたので、興味を持ったんだ。僕は印象派にしても、フェルメールにしても、一瞬の光が織り成す世界を描いた作品が好きなんです。

いくつかの作品を観ていく中で気付いたことは、フェルメールが窓から差し込む外光を描いているのに対し、ラ・トゥールは炎の灯りに照らされる明暗を描いているということ。ほのかな光によって作られる影が巧みに描かれているさまは、かなり写実的な印象です。しかし、タバコの火やロウソクなどの炎による灯りは、安定していないはず。チラチラと光の加減が変わっていくよね。動画でない以上、画家にとってできることは、そのうちの一瞬を切り取って描くしかなかったはず。炎に照らされた情景にしては、光が一定で安定していることに違和感を感じたのは、僕だけではなかっただろうし、画家自身が痛切に感じていたんじゃないかな。

展示の中ほどに、僕は同じシーンを描いた2枚の絵を見つけました。同じモチーフを、例えば明と暗で描き分けるような手法はよくあるけど、これはそうじゃない。一方はもう一方より、ほんの少しだけ明るいんだ。これを見たとき、ラ・トゥールの描きたかったのは炎が織り成す一瞬だったのだと感じ、そしてその移ろいを描ききれない葛藤をメッセージとして受け取った気がしました。

http://event.yomiuri.co.jp/latour/