【WBC】準決勝 メキシコ―日本

先発の佐々木朗希は、序盤から苦労している印象があった。球数を増やしたくない思いに加え、デッドボールを避けたい思いもあったのではないか。それはキャッチャーの中村の方が強かったのかもしれないが、とにかく内角をえぐるストレートを投げさせなかった。見ていて、ここはインハイにストレートだろうという場面でも、アイウトサイドにミットを構えることが多かった。そして3ランを喫する投球が、ウリアスのバットに捉えられた瞬間に見せた佐々木の反応が、ジャストミートだったことを示していた。

吉田正尚の3ランでなんとか追いついたものの、山本由伸を引っ張り過ぎて捕まってしまう。代打を使うタイミングも含め、栗山監督のこのあたりまでの采配には大いに不満だった。ただ、3点目を狙ったメネセスをホームで刺してチェンジになったことは、チームの雰囲気的には悪くなかった。山川の犠牲フライで1点差にしておいたことも、舞台という意味では大きかった。

そして迎えた9回裏。メキシコの抑えの切り札ガイェゴスの初球を大谷が逃さず、セカンドベース上で吠える。吉田が四球を選んで代走に周東。そして打席に村上が向かった。ここまでのWBCの戦いでは、村上がブレーキになっていた上に、周東の快速を生かすような場面もなかった。そんな村上と周東にとって、存在価値を示す絶好の場面が訪れたのだ。打球がセンターの頭上を越えると、見極めて走り出した大谷に周東が迫るような走塁を見せ、最後は周東のきれいなスライディングで勝負が決まった。劇的という言葉では言い尽くせないドラマが繰り広げられ、そして米国の待つ決勝に侍ジャパンが駒を進めることとなった。