【東京マラソン】ペーサーの功罪

一般参加を排除して敢行された東京マラソンは、MGC3位でオリンピックに近いところにいた大迫傑日本新記録で日本人最高位となり、さらにオリンピックに近づいた。彼が出て終盤に追い上げたことで設楽も井上もモチベーションを削られたはずなので、出場した選択は正しかったと言えるだろう。

沿道の観客にも自粛要請が出る異様な環境だったが、それ以上に大きな意味を持っていたのがペーサーの設定だった。先頭集団を引っ張る3人のペーサーも加え、その後ろの2人も日本記録を上回る設定だったと聞く。結果的に、第2集団のペーサーだった鎧坂は20km付近で消え、先頭集団を引っ張ったペーサーも30kmまでの役目を果たしたのは一人だけ。それだけ過酷なペースを大会側が仕込んだことになる。

井上大仁は、1キロ2分55秒のペースについて行って体力を削られた。そこを第2集団から上げてきた大迫が捕らえて抜き去った。つまり、ペーサーをどう使うかという戦術によって勝敗というか、代表争いに明暗が分かれてしまったのだ。確かに、あのくらいのペースでなければ世界では戦えないから、陸連の狙いは理解できる。そう考えると、選手や所属チームの戦術レベルが、世界に追いついていないということなのかもしれない。