瀬名秀明「デカルトの密室」で知の探求

瀬名秀明といえば、「パラサイト・イブ」「BRAIN VALLEY」など科学者としての知識・興味をベースにしたフィクションが持ち味ですが、この「デカルトの密室」ではロボット工学やAI(人工知能)のエッセンスを添えながらも、テーマはデカルトの「方法序説」にあるような哲学です。僕の言葉でまとめてしまうには、あまりにも膨大でなおかつ僕の知識の及ばない分野ではありますが・・・

この作品のアイテムをすべて理解することは不可能なので、僕はそれを早々に諦めました。それでも、知性は刺激されるし、自分の生活を違う視点から切り取ってみることが可能になると思います。「自我」とは何か、それは人為的に作り出すことができるのかというポイントは、実は僕がホームページで執筆中の小説「わがままな遺伝子」シリーズにも繋がるものです。登場人物のキャラが濃すぎて馴染めない部分はあるのですが、それを我慢して読んでも損はないですよ。まずはプロローグを立ち読みしてみることを、お勧めします。ここにエキスが凝縮されているので、「おもしろそうだな」と思うかどうかでこの作品との相性がわかることでしょう。