【ことば】母と海

三好達治の詩でも語られていることだけど、漢字では「海」の中に「母」が含まれているのに、フランス語では海は"mer"で母は"mere"なので、「母」の中に「海」が含まれている。どちらにしても、母と海は近い関係にあるということで、それは納得できる気がする。

寒い冬の朝に布団の中で丸まっていると、もしかしたら母の胎内でもこんな格好をしていたのではないかと思うことがある。布団の温もりは自分の体温だから、母親のお腹の中とほぼ同じ環境だろう。子どもやネコに背中を一定のリズムでトントン叩いてあげると落ち着くけれど、これも母親の心臓の鼓動にシンクロするからではないだろうか。そんな「安らぎの場所」である胎内は、羊水に満たされた原始の海だ。母は海であり、そして海が母であることを、人間は本能的に知っているのかもしれない。