【映画】ボヘミアン・ラプソディ

これは「ボヘミアン・ラプソディ」という曲の物語ではなく、フレディ・マーキュリーという「ボヘミアン」の狂詩曲だ。同名曲の詞が彼の行方を暗示していたかのような符合を追うように、テンポよくストーリーが展開する。クイーンのメンバーを演じる4人は皆よく似ているが、決してそっくりさんでは終わっていない。ラミ・マレックがいなければこの作品の実現は不可能だったとも思いつつ、でもあれはやはりラミであってフレディではないという思いも強く感じた。

ボヘミアン・ラプソディのコーラスのように行間ならぬ音符の隙間を埋めるエピソードが、リアルタイムでクイーンを聴いていた僕にはオーバーダブする。ラミの映像にフレディの記憶が重ねられるのは、僕たちの世代の特権なのかもしれない。だとすると、ここ数日僕のFacebookのフィードに次々登場するこの作品を見た友人たちのレポートも、同じ思いに裏打ちされているのだろう。

冒頭でフレディがウェンブリーのステージに向かうシーンは、ステージ経験者なら絶対あのワクワク感を思い出してゾクッとするはずだ。フレディの高揚感がとても巧みに描き出されている。音楽の使い方も、当然ながら秀逸だ。要所で使われる「サムバディ・トゥ・ラブ(愛にすべてを)」の歌詞もフレディの心境を表しているし、エンドロールの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」~「ショウ・マスト・ゴー・オン」もフレディの追悼としても効果的だ。