【東京都美術館】藤田嗣治展

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藤田嗣治の画風は、「カフェ」に代表されるようなパリのエスプリを纏い、日本のマンガのようなデフォルメで表情を描いた作品です。東京都美術館のこの展覧会で、「カフェ」はニューヨークで制作されたことを知って意外な印象を受けたのですが、藤田はひとつのスタイルに留まることなく、常に変化を取り入れているのですね。

率直に言って、彼のデッサンは下手なのだと思います。それでも、マンガのようなアプローチのデフォルメは藤田の味になっているし、ローランサンに近い顔の形や色の作品を見ると、いわさきちひろとの共通点も見い出せます。

初期の藤田は、対象をどのようなアプローチで描くかにこだわっていたように見えますが、徐々に「何を描くか」「何を表現したいか」が明確になってゆくのがわかる展示。それが彼のスタイルになり、作品の味わいになっているのだとあらためて感じられます。同時に、このプロセスこそがアーティストとしての成長なのだと確信しました。