【J.T.ブラナン】神の起源

ダン・ブラウン×X-file」という宣伝文句は決して嘘ではないけれど、ダン・ブラウンほど練り込まれた設定には至っておらず、X-fileにしては月並みすぎる仕掛けとも言えます。南極で4万年前の氷から発見されたホモ・サピエンスの遺体に端を発する物語は、時空を超えた結末を迎えるのですが、最後はどんでん返しというほどではないものの、それなりに満足できる読後感ではありました。
 
設定の薄さは、アクションのテンポの良さが補っています。展開があまりにも都合がよいのは、著者が処女作であることを考えれば仕方ないところかもしれません。アメリカ先住民と白人女性のカップルが巨大地下組織を相手に繰り広げるアクション・サスペンスは、エンタテイメントとして考えれば面白い仕掛けだと思います。
 
ただ、翻訳がいかにも過ぎて、一昔前の翻訳文学に浸りきってしまったのは残念です。せっかく新人作家なのですから、もっと現代的な翻訳にトライしてもよかったのではないでしょうか。今後に期待したい作家だと感じました。