【虚構の劇団】ビー・ヒア・ナウ

虚構の劇団は、サードステージの鴻上尚史が主宰する若手劇団。そして「ビー・ヒア・ナウ」は24年前に第三舞台が初演した作品です。今回は鴻上が脚本を大幅に改訂し、映画監督の深作健太が演出を担う新しいバージョンということで興味を持ちました。会場は池袋のシアターグリーン「Big Tree Theater」。お寺の敷地内にある劇場で雰囲気はよいのですが、最近こういう狭くて古いハコで観劇していなかったこともあって、2時間超の舞台の終盤はお尻が痛くて辛かったです。

登場人物に絡んでデスラー総統だのドロンジョボヤッキーだの、若い世代にはピンとこないようなネタが満載。鴻上作品らしい小ネタに第三舞台の流れを組むダンスが、懐かしさというかDNAを感じさせてくれました。「百草園東署」という設定も、多摩出身の僕にはツボでした。ただ最初のシーンのセリフを聴いた時点では「これは失敗だったか」と覚悟しましたが、それ以降は問題なく楽しめました。

配役がいまいちよくわからなかったのですが、印象に残ったのはビジネスマンのアシスタントを演じていた女性(虚構の劇団研究生の木村美月さん?)。「ドロンジョ」を意図的に間違えて「ドンジョロ」と言う場面のわざとらしいのにくどさのないところや、客席を抜けてハケる際に笑顔で全力疾走しているところが記憶に強烈に残ったのです。

作品で印象的だったのは、「私を愛する資格があるのは、私だけだ」というセリフ。「自分も愛せなくて、他人が愛せるのか」とは僕が常に心に持っているテーマなので、同じことなのだと感じました。いろいろなテーマが錯綜していますが、「生きて(生かされて)いることへの感謝」ということや「コーチング」に見え隠れする胡散臭さには共感しつつも、掘り下げが浅い気もしました。そして終盤は、もっとコンパクトにできたのではないかと思います。お尻の痛さもあいまって、間延びした印象でしたね。

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