【イサンゴ・アンサンブル】プッチーニのラ・ボエーム

池袋の東京芸術劇場プレイハウスで上演されている、南アフリカのカンパニー「イサンゴ・アンサンブル」の「プッチーニラ・ボエーム」。同名のオペラをベースに、舞台を南アフリカの貧困街「タウンシップ」に場を移し、スティールパンマリンバの伴奏で演じられる作品だ。裸足でのステップがリズミカルなダンスも秀逸でミュージカルのようでもあるが、「unpluged」で生音を聴かせてくれるのでオペラと言うべきだろう。

体格の良い黒人たちの歌は、決して正統派とは言えない発声で歌う部分も目立つ。子音に処理が雑だったり、コーラスが揃っていなかったり。しかし、情感たっぷりに歌い上げるアリアは、想像以上に心に刺さる演奏だった。20分のインターミッションを挟んで45分+40分と短い舞台だが、物足りなさもないし、だからといって飽きることもない。南アフリカの貧困と結核を主題に据えているが、それほど直接的ではないので、押しつけがましくなく状況を理解できたのは幸いだ。

当日券だったが、後ろから2列目の通路側で見ることができた。ただ、座席表で確認した空席以上に空席があり、観客の多くは高齢の女性で演劇にもクラシックにもそれほど精通している感じではなかった。このような、ある意味「前衛的」な舞台を楽しんで帰ったのかどうか、かなり疑問だ。スポンサーの配ったチケットなのだとしたら、残念な気がする。

https://www.geigeki.jp/performance/theater037/