【ルノワール+ルノワール展】色彩のDNA

渋谷のBUNKAMURAでは「ルノワールルノワール展」が開催されています。印象派の画家ピエール・オーギュスト・ルノワールと彼の息子で映画監督のジャン・ルノワールの作品を対比的に見せるという、ちょっと変わった企画展です。ルノワールの絵画自体も意外なほど質が高く、オルセーの所蔵品を中心になかなか見応えがありました。

映画監督ジャンの作風は、初期のものを見る限りではトリュフォーの模倣のようでもあり、伝統的なフランス映画の手法を感じさせます。しかし、年代が新しくなるにつれてモネの描く睡蓮の池やジヴェルニーの風景のような、光を巧みに映像の中に捉えたものが目立つようになります。この辺りは、さすがに父親から受け継いだDNAのなせる技なのでしょうか。

画家のピエール・オーギュストに関してはいまさら語るまでもありませんが、今回の展覧会で新たに発見したことがあります。それは彼のモデルに対する要求が高かったという事実を知ったことです。ルノワールの作品の中の人物は、肖像画を除けば表情がぼんやりとしていて、より「匿名性」を強く感じます。モデルの表情や個性、良さを引き出すのではなく、あくまで自分の描きたいものをモデルを通して具現化したいたということなのでしょう。

その意味では、彼の作品に登場する息子ジャンやクロードは表情が明確に描き出されていて、家族に対する愛を感じます。そのような題材で絵を描くときには、モデルを描く場合とは明らかに異なるアプローチがあったのでしょう。

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