【ハチミツとクローバー】等身大の大学生活

観て良かったです。他にすることもないし、という程度の意気込みでつけたWOWOWでの放送は、意外にも大満足の結果に終わりました。ストーリーは美大生たちの片思いが織り成すいかにもありがちなものだけど、そこに描かれている登場人物が実に活き活きとしているんです。久々にエンドロールの最後まで、テレビの前を立てずにいました。

一番驚かされたのは、主役の花本はぐみを演じた蒼井優。僕にとっての彼女の原点は、TBSのドラマ「タイガー&ドラゴン」で岡田准一演じる竜二の店「ドラゴンソーダ」の店員で、キツい性格の役柄を演じていたことでした。それだけに、本作での「絵画の天才的な素質を持ちながら、人とのコミュニケーションには問題がある美少女」という対極にあるようなキャラクターを見事に演じ切ったギャップに驚いたのです。

そして彼女だけではなく、櫻井翔伊勢谷友介加瀬亮関めぐみといった面々も好演していました。それぞれ自然な大学生を演じさせた高田雅博監督の手腕も見事です。作品中に登場する美術作品(絵画、彫刻)も個性のあるものですし、黒い靄のようなCGで登場する黒猫も面白い狙いだったと思います。

ただ、コミックが原作であるということを差し引いても、櫻井翔演じる竹本がはぐみに一目惚れする設定で花びらが舞うCGは作品を安っぽくしてしまったのではないでしょうか。また、原作を読んでいないのでわかりませんが、映画のキャスティングとしては他の配役が光った中では堺雅人に大学教師・花本を演じさせたのは無理があったように思います。声のキーの高さが教師っぽくないし、無理して演じているところがうかがえました。

この年齢になった自分としては、学生たちの無軌道ぶりが神経を逆なでる場面も多かったけれど、よく思い返してみれば自分も大学生の頃はまさにこの登場人物たちのような生活をしていたんですよね。「のだめ」では音大が舞台ですが、本作では自分には馴染みのない美大生の生活が垣間見えて、それもまた興味をつないでくれます。「ハチクロ」お勧めですよ。

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