【金刀比羅宮・書院の美展】動と静

上野の東京藝術大学・大学美術館で開催されている「金刀比羅宮・書院の美」展を鑑賞してきました。点数は少ないものの、襖や壁に描かれた大作は迫力があり、十分に楽しめます。3階で書院画を、地下2階で奉納絵馬など「金刀比羅宮」展であることを印象づける展示という構成なのですが、地下の展示は蛇足にも見えました。

3階の展示で興味を惹かれたのは、円山応挙伊藤若冲という両巨頭の作品の対比でした。応挙の作品は動画からキャプチャーした静止画のような「動きの中の瞬間」を封じ込めることに主眼を置いているのに対し、若冲の作品はディテールにこだわった細密画のような仕上がりなのです。例えば「鳥」を描くのに、応挙は鶴が着地する過程の首の動きやくちばしの角度にリアリティを感じる一方、若冲はその表情を巧みに描き分けます。

ところで応挙が「虎」を描いているのですが、日本には(少なくとも江戸時代には)生息していなかったはずですが、どのようなネタを元にしたのでしょうか。彼が描く虎はなんとなくずんぐりむっくりしていて、愛らしく見えます。もしかしたらネコをベースにして、頭の中で獰猛さを付け加えたのではないかと想像してしまいました。

会場の東京藝大美術館ですが、展示室は天井も高く見やすいものの、ワンフロアの面積が狭い上に展示室が3階と地下2階に分散していて「鑑賞者の導線」は最悪。しかも出口を2階と表示していますが、これはミュージアムショップとカフェを通過させるための策略です。年配の鑑賞者が多いだけに、この商売本位のコンセプトは考え直してもらいたいものです。

http://www.asahi.com/konpira/index.html