【ユナイテッド93】2作品の対比

作品の背景について説明の必要はないと思いますが、あの9・11テロで唯一標的の建造物に到達できなかった旅客機、ニューアーク発サンフランシスコ行のユナイテッド93便を扱ったものです。「エアポート ユナイテッド93」と「ユナイテッド93」の2作を続けて見ましたが、その描き方は実に対照的です。

前者が乗客乗員の家族を含めた心理を過剰なほどに描写していたのに対し、後者は淡々と事実(と思われるプロット)を追っていきます。ジョージ・W・ブッシュがいみじくも「戦争だ」と語ったように、これは異なる神を信じる者たちの戦いであるといえます。しかしながら、単にアメリカ国内の航空機に搭乗していたというだけで、米国の政治経済の中枢部を破壊することに利用しようとする行為は、やはり信教の自由を逸脱しているでしょう。

ただその意味を含めても、アメリカ合衆国の中枢であるホワイトハウスへの突入を防ぐ(=国家を守る)ためにコックピットに突入する愛国心に過剰に焦点を当てた「エアポート~」よりも、信じるものの違いがお互いの悲劇をもたらすという描き方をした「ユナイテッド93」の方が僕の心にはすんなり入ってきました。

北米で飛行機に搭乗するとよくわかりますが、彼らは知人であろうがなかろうが実にフレンドリーに会話を始めます。僕自身、トロントに空港で搭乗時間が迫っているときに前後に並んでいた見知らぬ乗客と連携して係員に交渉したこともあります。だから、この飛行機のような状況に陥ったら、乗客が一致団結してコックピットに突入することはごく自然なことだと思えるのです。それは愛国心というよりも、自分が正しいと信じることを実現するための行動力・決断力ということなのでしょう。