【ローランギャロス】加藤未唯/プッツ―アンドレースク/ヴィーナス

ローランギャロスのミックスダブルス決勝は、こんな結末でいいのだろうかと思うような劇的な幕切れだった。女子ダブルスで失格になった加藤が、苦しみながらの勝利。涙をこらえるように喜びを噛み締める加藤の凛とした表情が、いかにも彼女らしく素晴らしかった。スピーチでは用意したカンペが風に揺れてしまうと、すかさずプッツがマイクを持ってあげるというナイスなコンビネーション。渦中のソリベストルモとボウズコバへ向けて「サラとマリエ、またよい試合をしたい」と英語で語ったのは、ちょっとやり過ぎた感もないわけではないが、表情からもそれが加藤の偽らざる思いだったことが伝わってきた。

試合はマイケル・ヴィーナスのダブルフォルトで始まり、ファーストセット序盤は加藤とプッツが楽勝ペース。ところが中盤に追いつかれると、完全に流れを持っていかれた。ヴィーナスのプレーがことごとく当たり、アンドレースクともども強いショットで加藤のラケットを弾く。セットダウンから、セカンドセットはなんとかついて行ってはいたが、ブレークチャンスが来るとは思えない展開だった。

しかし、そこはダブルスの怖いところ。徐々に冴えてきた加藤のフロントでのネットプレーが決まりだすと、加藤とプッツにわずかな光明が見え始める。4-4からのリターンゲームを、ディサイディングポイントでものにすると、一気にセットオールに追いつく。加藤が苦しいときにはプッツが、プッツがうまくいかないときは加藤が補う見事なチームプレーで、長年連れ添った相方のようになっていた。

マッチタイブレークはいったんは追いつかれたものの、4-3から2本のミニブレークを決め、最後はヴィーナスのリターンがネットにかかり加藤/プッツが優勝をつかんだ。加藤が英語に苦労する一方で、プッツは英語につづけてフランス語で流ちょうなスピーチ。WOWOWのインタビューでは、鍋島さんがプッツにドイツ語で祝福するというグローバルな雰囲気のフィナーレだった。おめでとう、加藤未唯。いろいろあったけど、トータルでは間違いなくプラスだろう。